Cookieとは?種類や仕組み、設定方法を解説
Cookieとは、Webサイトにアクセスした際に、ユーザーが閲覧したページや入力した情報などが記録されたファイルのことです。Cookieによって、ユーザーは再訪問したサイトでデータの入力を省略できるなどメリットがあります。
CookieはWebサイトを訪問するユーザーだけでなく、企業のマーケティング担当者にとっても重要です。というのも、Cookieに記録されている行動データを元に、ターゲットユーザーに対して広告を配信したり、その効果を検証したりできるからです。
当記事では、マーケティング担当者に向けてCookieの概要から実践的なノウハウまで解説します。自社のマーケティング施策に活かす参考にしてみてください。
目次
Cookieとは
Cookie(クッキー)とは、Webサイトにアクセスした際に、パソコンやスマートフォンなどでユーザーが閲覧しているブラウザに記憶させるための情報(テキストファイル)のことです。具体的には、アクセスした人が行った操作やその情報、サイトの閲覧履歴(閲覧したサイトのリスト)、利用環境などの情報が保存されます。CookieはWebサイトからユーザーの閲覧しているブラウザに保存されます。
たとえば、IDとパスワードによるログインが必要なあるサイトを訪れ、一度離れてから再度アクセスした際、IDやパスワードを入力せずにログインできた経験を多くの方がお持ちではないでしょうか。ECで買い物かごに入れたあと、一度サイトを離れても商品が買い物かごの中に残っていることも珍しくありません。
これらはCookieが有効になっていることで起きる事象であり、ユーザーの利便性向上に一役買っています。
また、後述するように、ユーザーのデータを取得することで、ユーザーの趣味嗜好や興味関心に合った商品を提示したり、広告の表示が行えたりと、Webマーケティングの点からもCookieは重要な仕組みです。
なお、Cookieそのものはテキストファイルで構成されています。その容量は非常に小さく、デバイスの空き容量を圧迫することはほとんどありません。
Cookieの種類
Cookieには、大別すると以下のように2組4種あり、それぞれ発行元や機能が異なります。
1st Party(ファーストパーティ)Cookie
1st Party(ファーストパーティ)Cookieは、訪問先のWebサイトのドメインが発行するCookieのことです。各Webサイトが個別に発行しており、そのサイト内でのみ活用されます。主にWebサイトの閲覧履歴やログイン情報、ECで買い物かごに入れた商品の情報などが含まれ、ユーザーの同一サイト内での行動情報などを詳細に記録できます。
なお、1st Party Cookieにおいては、ユーザーが他のデバイスやサイトに移行した場合、異なるユーザーと認識されるので、他のWebサイトでの閲覧履歴などを横断的に追跡することはできません。
3rd Party(サードパーティ)Cookie
3rd Party(サードパーティ)は、訪問先のWebサイトとは別のドメインが発行するCookieのことです。発行主体の代表例としては、Webサイトに掲載されている広告を配信するサーバーなどが挙げられます。1st Partyとは異なり、他のWebサイトに移行してもユーザー情報を横断的に追跡できる点が特徴です。
ECで閲覧した商品や検索結果に表示されたページを見たあと、それに関連する広告が他のWebサイトで表示されることがよくあります。このようにユーザーのWebサイト上の行動履歴をもとに、ユーザーの興味にマッチした広告を配信する手法を「リターゲティング広告」と呼びますが、ここで活用されているのが3rd PartyのCookieです。
こうしたリターゲティング広告を表示する機能などがあることから、3rd partyはWebマーケティングの観点から重要であり、特に広告主から重宝されています。一方で発行者がユーザーの情報を多くの異なるサイトから入手できてしまうため、後述するように近年は個人情報保護の観点から、自由な利用が徐々に制限されつつあります。
セッションCookie
セッションCookieとは、ユーザーがあるサイトを訪問した際に一時的にCookieが作成されることをいいます。ユーザーがそのサイトから離脱すると、削除されます。
永続Cookie
永続Cookieとは、ユーザーがあるサイトを訪問した際のセッション情報を有効期限まで、あるいはユーザーが削除しない限り、有効であるCookieを指します。
セッションCookieは、ユーザーがサイトから離脱すると削除されますが、永続Cookieの場合は削除されません。
Cookieとキャッシュの違い
Cookieとよく似た概念に「キャッシュ」があります。キャッシュとはWebページの情報・データを一時的にブラウザに保存する仕組みのことです。どちらもWebサイトを訪れたときにデータを保存する点では同じですが、以下のように保存する対象と目的が異なります。
Cookie | キャッシュ | |
---|---|---|
保存する対象 | ユーザーのユニークデータ(ログインID、パスワード、閲覧情報等) | WebページのデータHTMLコード画像、CSS、JavaScriptファイルヘッダー情報 |
利用目的 | サイトにアクセスした「ユーザー」の情報を保存したい場合 | ユーザーがアクセスした「ページ」の情報を保存したい場合 |
つまり、Cookieはユーザー個人に関する情報を、キャッシュはWebページそのものの情報を保存する仕組みということです。キャッシュでは画像など容量の大きなデータも保存するので、同じページを2回目以降に訪問したとき、再度データを読み込む必要がなくなり、表示速度が速まるなどのメリットがあります。
Cookieの目的
Cookieの目的は、以下の通りWebサイトの利用者(ユーザー)側と運営者側によって異なります。
ユーザー側の目的
ユーザー側にとってCookieを活用する目的は、主にサイトを閲覧する際の利便性向上のためです。
ECサイトを離脱したあとでも、以前に買い物かごに入れた商品が残っていれば、再度商品を探すことなくスムーズに購入できます。また、SNSなどにログインした情報がCookieによって保存されていれば、2回目以降はIDやパスワードを入力することなくアクセスできます。
Webサイト運営者側の目的
運営者側にとって、Cookieを通じて得られたユーザーの情報は、マーケティングを行ううえでの重要なデータです。たとえば、ユーザーが閲覧したページの履歴や商品の購入情報などのデータを収集・活用することで、ユーザーの興味を惹きそうな広告を配信できます。
Googleアナリティクスからも以下の引用の通り、Cookieが発行され、ユーザーのブラウザに保存されます。Webサイト運営者の方はGoogleアナリティクスを活用してCookieを発行し、Webサイトやユーザーのアクセスに関する情報を取得することができます。
Google アナリティクスは、ウェブサイトのコンテンツに対するユーザーの操作を簡単に測定できる便利なツールです。Google アナリティクスでは、JavaScript タグ(ライブラリ)と HTTP Cookie を使用して、ウェブページにおけるユーザーの行動や閲覧したページの URL など、ユーザーとウェブサイトとの接点となるデータを「記憶」します。
出典:Google アナリティクスによるウェブサイトでの Cookie の使用
このように、Webサイトの運営者は主にマーケティングの目的でCookieを活用しています。
Cookieのメリット
先述の通り、Cookieはユーザーの利便性向上やサイト運営者・広告主のマーケティングへの活用といった目的で利用されますが、ユーザー、企業双方にとって以下のようなメリットがあります。
- ログインの手間を省略できる(ユーザー側)
- ECで買い物かごに商品が残る(ユーザー側)
- フォームにメールアドレスや氏名、住所などの候補が表示される(ユーザー側)
- ユーザーの興味関心に合った広告が表示される(ユーザー側)
- マーケティング施策に活用できる(企業側)
ログインの手間を省略できる
ログインが必要なSNSやWebサイトにおいて、一度IDやパスワードを入力してログインすると、Cookieの機能により一定期間ログイン情報が保存されます。これにより、ページから離脱してもう一度アクセスした際にIDなどの情報を入力する手間を省略できます。何度も頻繁に訪れるSNSやサイトがある場合、このメリットを実感することが多いはずです。
ただし、複数のブラウザを横断して情報が保存されるわけではないので、他のブラウザからアクセスする際には、再度ログインのための入力作業が必要となります。
ECで買い物かごに商品が残る
ECでは、商品を購入する前に買い物かご(カート)に入れるのが一般的です。他の商品と比較したり購入を迷ったりして、商品を買い物かごに入れたままサイトを離れることもよくありますが、Cookieが有効になっていればその情報が保存されるため、再びサイトを訪ねたときに商品が買い物かごの中に残っています。
そのため、もう一度同じ商品を探して買い物かごに入れる作業が不要になり、ECでの買い物をスムーズに行えます。EC運営者にとっても、機会損失を最小化できるメリットがあります。
フォームにメールアドレスや氏名、住所などの候補が表示される
ECにはたいてい、商品のお届け先情報(住所、メールアドレス、連絡先など)やクレジットカードの情報などを入力するフォームがあります。Cookieの機能があることで、過去に入力した候補が表示されるため、入力の手間を省くことが可能です。
メリット③と同様に、この点もECでスムーズに買い物を行ううえで役立ちます。
ユーザーの興味関心に合った広告が表示される
先述のように、3rd Party のCookieを活用することで、サイトを横断してユーザーの興味関心に沿った広告が表示されます。
たとえば都内への引っ越しを控えている人が、少し前まで不動産サイトで都内の物件を調べていたとします。その後、不動産とは関係のないページを訪問した際に、都内の賃貸情報を掲載した広告が表示されるなど、ユーザーの役に立つ情報が提供されるケースが当てはまります。
広告自体を煩わしいと感じるユーザーも一定数いますが、少なくとも全く興味のない商材の広告が表示されるよりも、ニーズに合った広告が表示される方がユーザーにとって有益だと考えられます。
マーケティング施策に活用できる
一定期間内にサイトを訪問したユーザーの情報を集め、アクセス解析を実施することでサイト改善に役立てるなど、マーケティング施策に活用できます。
上述したように3rd Party のCookieを活用することで、ユーザーの興味に合った広告を配信し、広告収益拡大などに活かすことも可能です。特定のアクションを起こしたユーザーにターゲットを絞って、リターゲティング広告の配信などが可能になります。
※ただし、Googleは3rd Party Cookieの完全廃止に向けた取り組みを加速させているため、近い将来、リターゲティング広告も廃止されるか、別の仕組みに代替される可能性があります。
Cookieを用いたGoogleアナリティクスもWebマーケティングには必須のツールであり、Webサイトの集客やコンバージョンの最大化に活用することができます。
Cookieのデメリット(危険性)
Cookieには以上のようなさまざまなメリットがありますが、一方でデメリットもあり、運用する際には注意が必要です。主なデメリットとしては以下2つが挙げられます。
- アカウントのなりすましや不正利用のリスクがある
- ユーザーのプライバシーに関する問題がある
アカウントのなりすましや不正利用のリスクがある
Cookieを利用していると、SNSへのログイン情報やECでのフォームへの入力情報などが保存されるため、何らかのきっかけで他者が本人になりすましてログインしたり、不正利用を行ったりするリスクがあります。
こうしたリスクは、たとえば以下のような場合に顕在化します。
- スマートフォンやパソコンを紛失した
- 公共のスペースなどでスマートフォンのロックをしないまま、あるいはパソコンを開いたまま離席した
- 共用のパソコンを利用している
- 一時的にパソコンやスマートフォンを他人と貸し借りした
ECの不正利用によっては多額の被害を受ける可能性などもあるため、共用のデバイスではCookieを利用しないことや、離席する際にはデバイスにロックをかけること、またパソコンやスマートフォンを一時的に借りる際には個人情報を残さないなど、基本的な対策を徹底しましょう。
ID・パスワードの入力のほか、SMS(ショートメッセージサービス)で送られたコードの入力や指紋認証などを組み合わせる、「2段階認証」の設定もおすすめです。
ユーザーのプライバシーに関する問題がある
Cookieで保存される情報には個人を特定できるものは含まれません。とはいえ、自身の興味関心や購入履歴などを知らない間に捕捉され、さらに過度にパーソナライズされた広告表示などのマーケティングに活用されることに抵抗を覚える人もいます。
また、Cookieを通じて得られたデータを他の企業と売買するなど、通常のマーケティングの範囲を超えて悪用される可能性もゼロではありません。
Cookieの設定方法
これまで紹介したようなメリット・デメリットを踏まえ、Cookieを有効化すべきか、もしくは無効化すべきか判断する必要があります。そこで以下では、Cookieを有効化・無効化する方法と、サイト閲覧後にCookieの情報を削除する方法について、パソコンでのポピュラーなブラウザであるGoogle Chromeを例にご紹介します。
※Cookieに同意しないとどうなるのか、どのような不都合・デメリットがあるのかについては、後述していますので、気になる方はそちらにも目を通してみてください。
Cookieを有効化・無効化する方法
まずはブラウザ右上の3点リーダから、「設定」をクリックします。
設定画面が表示されるので、左側の「プライバシーとセキュリティ」をクリックしたあと、「Cookie と他のサイトデータ」をクリックします。
すると、以下のようにCookieの設定画面が表示されます。
「Cookieをすべて受け入れる」は、文字通り1st Party, 3rd Party問わずすべてのCookieを受け入れるモードです。Cookieを常時有効化したい場合にはこちらを選択します。
「シークレットモードでサードパーティのCookieをブロックする」は、シークレットモード(閲覧やダウンロードなどの履歴を残さない機能のこと)起動時のみ3rd PartyのCookieを拒否するモードです。
「サードパーティの Cookie をブロックする」は、通常時でも3rd PartyのCookieを拒否するモードです。なお、3rd PartyのCookieをブロックすると、一部のWebサイトの機能が正常に動作しなくなる可能性があります。
Cookieを無効化したい場合には、「すべてのCookieをブロックする」を選択するか、その下の「すべてのウィンドウを閉じるときにCookieとサイトデータを削除する」をオンにします。
Cookieを削除する方法
Cookieを削除する場合は、有効化・無効化と同じ手順で「プライバシーとセキュリティ」の画面まで進み、「すべてのサイトデータと権限を表示」をクリックします。
以下の画面が表示されるので、すべてのサイトのCookieを削除したい場合は「データをすべて削除」、個別に削除したい場合は、削除したいページの右側にあるゴミ箱マークをクリックします。これでCookieの削除は完了です。
ただし、Cookieを無効化あるいは削除してしまうと、ECで買い物かごに商品を残せなかったり、ログインが必要なサイトで毎回IDやパスワードを入力しなければならなかったりと、不便さを感じることがしばしばあります。そうしたデメリットはあらかじめ理解しておいた方が良いでしょう。
Cookie規制の動きと影響
先にデメリットの2つ目で述べたように、最近ではプライバシー保護の観点からCookieの自由な活用に制限をかける動きが見られます。以下では、そうした規制の動向や影響について見ていきます。
Cookie規制に関する法整備とブラウザの動き
2022年4月に施行された「改正個人情報保護法」では、3rd Party のCookieで取得された情報を他社に提供する際には、ユーザーが同意しているか確認することが必要となりました。実際、最近ではサイトを訪問すると、Cookieの使用に同意するか確認を求める表示を目にすることが増えたと感じる方も多いのではないでしょうか。
また、Apple社が提供するブラウザのSafariでは、3rd Party のCookieの利用が2020年3月からブロックされています。Googleも、Chromeブラウザにおける3rd Party のCookie を2024年後半から段階的に廃止すると発表しています。
Cookie規制の影響
Cookie規制によって、主に3rd Party のCookieを活用した広告運用に影響が出ます。
たとえば、先述のリターゲティング広告は自社とは別のサイトに訪問中のユーザーに向けて展開する広告ですが、それを実現するために3rd Party のCookieを付与します。ただし、それもCookieの規制が進むと、3rd Partyを活用したリターゲティング広告の配信が難しくなるなど、広告配信のあり方を大きく変更する必要性が出てくることが考えられます。
また、3rd Party のCookieを活用したアフィリエイト広告(広告経由での成約を通じて、サイト運営者が報酬を得る仕組み)の配信もしにくくなり、アフィリエイト報酬を正確に把握できなくなる懸念などもあります。
Cookie規制に向けて行うべき対策
Cookieの規制が進みつつある状況は「Cookieレス」とも呼ばれますが、このCookieレス時代にはどのような対策を行えば良いのでしょうか。
まず考えられるのは、Cookieにより取得した情報について、ユーザーの同意を得るための仕組みづくりです。具体的には、訪問したWebサイト上でCookie取得の同意確認を取れるツールの導入が必要となります。
また、ユーザー個人の情報とは無関係に、訪問したサイトの内容に近い広告を配信する手法である「コンテクスト広告」の活用も選択肢の1つです。コンテクスト広告自体は新しい手法ではありませんが、個人情報保護が重視されるCookieレス時代に入ったことで、注目を集めています。
Cookieに同意しなかった場合どうなるのか
先に触れたように、最近ではWebページを閲覧していると「このWebサイトはCookie を使用しています。Cookieの有効化に同意しますか?」といったポップアップが表示されることがよくあります。ここで同意しない場合どうなるのでしょうか。
結論としては、同意しないために重大な悪影響が生じるようなことはありません。
ただし、ログインが必要なサイトをリピートして訪問する場合、ログイン情報をその都度入力する必要があるなど、利便性が低下する可能性はあります。また、会員登録が必要なECなど、Cookieに同意しないと利用できないサイトが一部あることにも注意が必要です。
このほか、ログインが必要ないサイトでも、Cookieの同意を拒否すると同意を求めるポップアップが何度も表示されることがあり、人によっては煩わしいと感じるかもしれません。
まとめ
今回は、Cookieの概要や種類、メリット・デメリットなど、初学者向けに基礎知識を解説しました。Cookieの機能があるおかげで、ユーザーは以下のメリットがあります。
- ログインの手間を省略できる(ユーザー側)
- ECで買い物かごに商品が残る(ユーザー側)
- フォームにメールアドレスや氏名、住所などの候補が表示される(ユーザー側)
- ユーザーの興味関心に合った広告が表示される(ユーザー側)
一方で企業側もマーケティング施策に活用できる利点があります。
その反面、プライバシー保護の面で課題があり、企業のマーケティング担当者にとっては、これまでのように自由にCookieを活用できる環境ではなくなりつつあることも事実です。特に、自社以外のサイトも含め横断的に情報を取得できる3rd Partyについては、将来的に廃止の方向に進みつつあるため、マーケティング担当者は個人情報の適切な管理・運用など、Cookieレス時代に適した施策を今から講じていくことが大切です。
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